子どもの「好き」を応援すると、いいことがいっぱい起こる

●子どもの「好き」を否定するか応援するか

私が教えた小学5年生のある女の子は絵を描くのが大好きでした。
でも、お母さんはそれが気に入りませんでした。

「低学年ならともかく、高学年にもなっていつまで絵ばかり描いているの?そんなことより、もっと問題集をやりなさい」という感じでした。

あるとき、私は学級懇談会で、子どもが好きなことを応援することの大切さを話しました。
すると、お母さんは深く納得してくれて、そんなに絵が好きなら応援しようと決意してくれました。

それからは、一緒に美術館に行って本物の絵を見たり、図書館で絵の本を見たり借りたり、というようにいろいろと応援してくれました。
そして、あるとき色数の多い色鉛筆を買ってくれました。

これがとてもよい結果をもたらしました。
色数が多いことで絵を描くのがますます楽しくなり、できあがる絵もさらによくなりました。
すると、友達から「○○ちゃん、絵がうまいね」と言われるようになりました。

そして、ある子が「この猫の絵、すごく上手だね。ねえ、私にも描いて」と言って紙を持って来ました。
それからは、休み時間になると絵を描いてもらいたい子たちが並ぶようになり、ちょっとした行列のできる画家という感じになりました。

●絵がきっかけで自信がついた

 彼女はもともと大人しくて友達が少なく、消極的で授業中に発表することなどめったにない子でした。また、片づけが苦手で忘れ物も多い子でした。でも、これがきっかけでブレイクしました。

 それまでは、朝お母さんに起こされてもなかなか起きなかったのですが、毎朝飛び起きて一番早く学校に来るようになりました。
なぜなら、お客さんが待っているからです。休み時間だけではさばき切れなくなっていたので、早く学校に行って絵を描きたかったのです。

友達もたくさんできましたし、しばらくしたら授業中に発表するようにもなりました。
万事において張り合いが出て、毎日明るく楽しく生活できるようになりました。
絵のことで自信がついて、いい循環が始まったのです。

これが5年生の時です。
次の6年生のとき、私は他の学年を受け持つことになったので担任がかわりました。

●バザーで小物を売りまくる

しばらくして、新しい担任の先生に「どう、あの子絵を描いてる?」と聞いてみました。
すると、「絵なんてぜんぜん描いてないよ」という返事でした。
私が「え、描いてないの?じゃあ、何してるの?」と聞くと、「休み時間は友達と手芸ばかりやってるよ。
毎日いろいろ一生懸命作ってるよ」とのことでした。

私は「やっぱり子どもだなあ」と思いました。
子どもは飽きっぽいところがあるからです。
でも、それでいいのです。
好奇心旺盛でいろいろなことに興味を持ってやってみたくなるのが子どもなのです。

一時期熱中したことは次に生きるからムダではありません。
絵のことで自信がつき、友達も増え、それから今度は毎日手芸に熱中している、すばらしいことです。
もちろんお母さんも手芸のことを応援してくれました。

そして、彼女は小学生新聞を読んでいたので、その記事から手芸をPTAバザーで売るというアイデアを思いつきました。
それで、友達を誘ってPTA役員さんに頼みに行きました。

「ぜひやってください」ということで許可を得て、バザー当日は「いらっしゃい。いらっしゃい」と言いながら手芸の小物を売りまくりました。
そして、その収益金を福祉団体に寄付したのです。

全部彼女がリーダーになって実行しました。
数年前なら考えられないことでした。
これくらい子どもというものは変わることがあるのです。

●自己肯定感と自己実現力がつく

その変化の第一歩は、お母さんが大好きな絵を応援してくれたことです。
そのおかげで絵について深めることができ、自信がついたのです。

何事もそうですが、子どもは何か好きなことがあっても、親の応援がないとそれを深めることができません。
必要な物も買えないし、情報も得られないし、体験もできません。
ですから、他のことよりちょっと好きで終わってしまうのです。

親の応援があると、好きなことをどんどん深めることができます。
そして、「これは自信がある。これなら誰にも負けない」と思えるようになります。

こういうものが1つでもできると、子どもは自分に自信を持てるようになります。
すると、他のことでもできそうな気がしてきます。
つまり、自己肯定感が持てるようになるのです。

また、好きなことを応援してあげると、子どもの自己実現力がつくというのも大きなことです。
つまり、自分がやりたいことを自分で見つけて自分でどんどんやっていく力です。

この女の子は、絵や手芸に熱中することを通して、自分がやりたいことをどんどんやっていくことの楽しさを味わったのです。
それで、彼女は6年の後半には自ら立候補して児童会の役員にもなりました。

このように、自己実現の楽しさを味わった子は、自分でやりたいことを見つけてどんどんやっていけるようになるのです。

●生活習慣も改善する

自己実現力のある子は、大人になってからも自分がやりたいことを自分で見つけてどんどんやっていけます。
これが本当の自立です。こういう子は、大人になってからも「自分は何をやればいいのかわからない」と悩むことはありません。

言われたことはできる、宿題も片づけもちゃんとできる、与えられた仕事はきちんとできる、でもとくに自分がやりたいことはない…。
子どもでも大人でもこういう人はいますが、ちょっと寂しいですね。

自己実現力のある人は、常にやりたいことがいくつもあり、それに向けて自分で勝手にがんばります。
そうすると、その時々の必要性に応じて、生活習慣の面で苦手だったことが直ることがあります。

やりたいこと・目的・夢を持ってがんばっている場合、それを達成したいという強い気持ちがあるので、それまでできなかったことができるようになるのです。

時間にルーズだと夢が実現できないし、だらしがないと目的が達成できないのです。
忘れ物をしていては達成できないし、挨拶できなければ達成できないのです。
この時はじめて、親からいくら言われてもできなかったことが、自らの必要性においてできるようになるのです。

初出『月刊サインズ・オブ・ザ・タイムズ(福音社)』

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