納得度とやる気は正比例する。百回の小言より一回の啓発

●納得すればやる気が高まる

親には、子どもにやらせたいことや守らせたいことがたくさんあります。
例えば、手洗いやうがいをさせたい、危険な飛び出しを止めさせたい、自転車に乗るときはヘルメットをかぶらせたい、歯磨きをさせたい、早寝・早起きをさせたい、などです。

でも、子どもはなかなかやってくれません。
どうしたら子どもはやってくれるようになるのでしょうか?

大人がつい忘れがちでありながら、実は意外と効果的なのが啓発です。
つまり、その必要性や大切さを子どもが理解できるように教えてあげることです。
その必要性について心から納得すれば、自らのやる気が高まって、けっこう自分から進んでやるようになるものなのです。

学校でも授業の中で子どもへの啓発をおこなっています。
私もうがいと手洗いについての授業をたびたび行いました。

●写真、動画、イラストを使うと説得力が高まる

インフルエンザ・ウィルスの顕微鏡写真を見せると、子どもたちは驚きます。
咳やくしゃみの飛沫がどのように飛び散るかを説明する動画を見せたこともあります。
子どもたちは想像以上に広い範囲に散らばることを知って驚いていました。

手洗いをする前の手と、石鹸でしっかり洗った手を比べた写真も効果的です。
特殊なライトを当てて撮影した写真で、洗う前の手がどれくらい汚れているかがわかります。

医者が効果的な手洗いの仕方を説明する動画を見せ、その洗い方で実際に洗う練習をするのも効果的です。

こういう授業のあとは、子どもたちは学校でも家でもうがいと手洗いをしっかりやるようになりました。
保護者たちからも、「帰ってくるとすぐうがいと手洗いをするようになりました。今まで何回言ってもやらなかったのに…」という報告をたくさんもらいました。

口頭で「しっかり手を洗いましょう」と言ったり、「ちゃんと石鹸で洗わなきゃダメでしょ」「何度言ったらできるの?」などと叱ったりするだけでは、なかなか実行に結びつきません。

というのも、実は子どもたちは手洗いの必要性を本当にはわかっていないからです。
「また言ってる。そんなにやらなくても大丈夫だよ」くらいに思っているのです。

ところが、写真、動画、イラスト、専門家の説明などを使って伝えると、ぐんと説得力が増します。
そして、子ども自らが「ああ、そうなんだ。これからはちゃんと手を洗おう」と思えるようになるのです。

●資料集めはネット検索で

その納得度が高ければ高いほど実行に結びつきます。
つまり、納得度とやる気は正比例するのです。

もちろん、日が経つにつれてだんだん効果は薄れますが、それでもしばらくの間はかなりの効果があります。
そして、忘れた頃にまたおさらいをしてあげれば、再びやる気になります。

このようなわけで、家庭でも啓発を大事にして欲しいと思います。
でも、こういうことを実際にやっている家庭はあまりありません。
啓発の大切さとその効果がわかっている親は極めて少ないからです。

写真、動画、イラスト、わかりやすい説明などは、ネットで簡単に集めることができます。
先ほどの例で言えば、「インフルエンザ 予防 手洗い」などの言葉を組み合わせて検索します。
「インフルエンザ 動画」「インフルエンザ 画像」などの言葉で検索すれば、すぐ使える動画や画像が出てきます。

●交通安全の啓発も、ぜひ!

ぜひとも実行して欲しいのが交通安全の啓発です。
子どもが事故に遭う前に実行しましょう。

警察がおこなう子どものための交通安全教室では、走っている自動車が急ブレーキをかけて止まるまで、どれくらいの距離が必要かわからせる実験をして見せてくれます。
これは「車は急に止まれない」ということをわからせるのに効果があります。

また、子どもの人形が飛び出して車にはねられる場面を実際に見せることもあります。
これはかなり衝撃的なので、子どもたちから悲鳴があがるくらいです。

ネットにはこれらの動画もありますので、それを親子で一緒に見ながら、どういうことに気をつけたらいいか話し合うといいでしょう。

自転車の事故で、ヘルメットをしっかり被っているのとそうでないのとでは、どのような違いが出るかを教えてくれる動画も効果的です。

もう一つ、ぜひやって欲しいのは、実際に子どもがよく通る道や通学路などを親子で一緒に歩いてみることです。
親の目で危険なところを見つけ、注意すべき点や安全のための対処法をその場に即して教えてあげましょう。
実際の現場で具体的に教えると、非常に大きな効果があります。

以前、私は、交差点で道路ぎりぎりに立って信号待ちをしていた子が、左折する大きなトラックの後輪に巻き込まれそうになるのを目撃したことがありました。

車が曲がるときは後輪が前輪よりも内側を通り、この前輪と後輪の車を内輪差といいます。
トラックやバスなどの大きな車だと内輪差が非常に大きくなって危険なのですが、子どもはそのことを理解していません。
前輪が通り過ぎた時点で安心してしまい、後輪が自分に近づいていることに気づかないのです。
ですから、実際に交差点に立ちながら、そのことを教えてあげて欲しいと思います。

「ここで飛び出したらどうなるか?」と想像させたり、横断歩道の位置を確認したりすることも大切です。
小さい子の場合は、「右よし・左よし・右よし・渡ってよし」と確認してから渡る練習を繰り返して、身体で覚えるようにすることも大切です。

●歯磨きと早寝・早起き

歯磨きを習慣付けたいときは次のようなことを教えてあげると効果があります。

・歯磨きをしないと食べカスが歯についたままになり、虫歯菌や歯周病菌などが住み着いて増える。1個の細菌が1日で1億個に増える

・子どものときの歯肉炎を放っておくと歯周病になりやすい
・歯周病になると歯が根こそぎ抜け落ちる

私がおこなった授業では、子どもたちは細菌の写真に目を見張ったり、1個の細菌が1日で1億個になることに驚いたりしながら、歯磨きの大切さを理解していきました。

字数が尽きましたが、早寝・早起きをさせたいときは、成長ホルモンのことを説明してあげると効果があります。

成長ホルモンは、骨をつくる、身長を伸ばす、筋肉をつけるなどの働きを促進し、脳の発達や記憶力の向上にも関係があります。
そして、これは、睡眠が不規則だったり足りなかったりするとうまく分泌されなくなります。

ということで、「百回の小言より一回の啓発」です。
ぜひ、実行してください。

初出『月刊サインズ・オブ・ザ・タイムズ(福音社)』

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