できないことをやってあげていると、子どもはいつまでも自立できない?

●「やってあげていると自立ができない」というのは罪深いウソ

片づけができないときやってあげていると、いつまでもできるようにならない。
着替えが遅い子を手伝ってあげていると、いつまでもできるようにならない。
自分で起きられない子を起こしていると、いつまでも自分で起きられるようにならない。

このようなことを言う人たちがたくさんいます。
そのせいで、親たちはみんな、子どもができないことを手伝ったり、やってあげたりすることはいけないことだと思っています。

百歩譲って「手伝う」はいいとしても、「やってあげる」などというのはもってのほかだと思っています。

中には、「親がやってあげているといつまでも自立ができない」などと言っておどす人もいます。
子育ての本や雑誌にも、そういう話がたくさん溢れています。

でも、本当は決してそんなことはありません。
私はそういう話はすべて作り話でありウソだと思います。
しかも、実に罪深いウソです。

なぜなら、そういうことを言ったり書いたりする人がいるせいで、親たちはみんな清々した気持ちで子どもができないことを手伝ったり、やってあげたりすることができないからです。

たとえやってあげるにしても、叱りながらでないとできない、ということになってしまっています。
こういうウソのせいで、どれだけ多くの親と子どもが不必要に苦しんでいるかわかりません。

●お互いどうしようもないときどうするか?

子どもがどうしてもできないときは、やってあげればいいのです。
そんなことは自立と何の関係もありません。
それが私が強く主張したいことです。

もちろん子どもができないなことについては、まずは合理的な工夫をして、少しでもやりやすくしてあげることが大切です。

例えば、片づけができないならワンタッチ収納やラベリングや片づけタイム、朝起きられないなら目覚まし時計や照明の工夫などです。

でも、工夫してもできないこともあります。
あるいは、工夫する余地がないこともあります。
そういうときどうするかが問題です。
お互いどうしようもないときどうするかということです。

そういうとき、たいていの親たちは子どもを否定的に叱ってしまいます。
「また○○してない。何度言ったらできるの。○○しなきゃダメでしょ」というようにです。

あるいは、手伝ったりやってあげたりすることもあるのですが、その場合も気持ちよくやってあげることができません。
どうしても否定的に叱りながらやることになります

●否定的に叱ることの弊害は甚大

ところが、親がこのように否定的に叱り続けると、子どもには様々な形で弊害が出てきます。
しかも、どれも子どもの人間形成に関わる深刻な弊害ばかりです。

まず、否定的に叱られてばかりいると、子どもは自分に自信が持てなくなり、自分はダメな子だと思うようになります。
そうすると、何事においても「できる」と思えなくなり、がんばるエネルギーがなくなってしまいます。

また、否定的に叱られ続けることで親子関係が悪くなり、子どもは「もしかしたら親に愛されていないのではないか?」という不安を感じるようになります。
これが愛情不足感といわれるものです。

親の愛情不足を感じている子は、親の愛情を確認したいという衝動に駆り立てられます。
そして、危険なことや反社会的なことなど、親に心配をかける行動に走ります。
万引き、火遊び、落書き、深夜徘徊、物を壊す、友だちをいじめるなどです。

それに対して親が心配します。
それを見て子どもは「ほら、こんなに心配してくれてる。愛されている証拠だ。よかった」と安心したいのです。
つまり、親が心配する姿を見て愛情を確認したいという無意識的な衝動、これが愛情確認行動なのです。

●できないとき気持ちよくやってくれる親の方が、子どもはできるようになる

親が否定的に叱り続けることによって引き起こされるこのような弊害は、親たちが思っている以上に深刻です。
絶対にこのようなことは避けるべきです。
こんなことになるくらいなら、手伝ってあげたり、やってあげたりした方がよほどましなのです。

できないときは全部やってあげて、やる気があって調子がいいときは一緒にやり、ちょっとでもできたときはほめて、それから少し手を離して様子を見たり、また無理なときはやってあげたり……。

このようなことを繰り返しているうちに、だんだんやり方を覚えたり自信がついたりしてきます。
それによって、できなかったことができるようになることもあるのです。

ですから、できないときはやってあげてください。
やってあげると自立ができないなどというのは迷信です。
子どもができないときは気持ちよくやってくれる、そういう親の方が、かえって子どもはできるようになります。

やってあげるとき気をつけて欲しいのは、叱りながらでなく気持ちよくやってあげるということです。
そうすると、子どもはうれしくなって親に感謝する気持ちが出てきます。

「やってもらっちゃった。助かった。ありがとう。お母さんも忙しいのに悪かったかな。これからちゃんとやらなきゃ。お母さんが大変なときは私も手伝ってあげなくちゃ」。
こういう気持ちになれるのです。

叱られていないから、とがめられていないから、素直な気持ちになれるのです。
ガミガミ文句を言いながら否定的に叱りながらやってあげていると、こうはなりません。

その反対に、「今やろうと思っていたのに、なんで勝手にやるんだよ。頼んでもいないのに、何を勝手なことしてるんだよ。文句言うならやらなくていいよ。放っておいてよ」という気持ちになってしまい、感謝するどころではありません。
そして、ますます反対のことをしたくなります。

●本当の自立とは何か?

大事なことなのでもう一度言います。
子どもができないことについて、否定的に叱り続けることだけはやめましょう。
それはあまりにも弊害が大きいからです。

まずは合理的な工夫をしてみて、それでも無理ならやってあげてください。
「やってあげているといつまでも自立できない」などというのはウソです。

できないときはやってあげて、ちょっとでもできたらほめて、様子を見ながら少しずつ手を離していけばできるようになります。
このようなわけで、やってあげると自立ができない、などというのはウソなのです。

そして、私がそういうことを言うのにはもう一つ理由があります。
それは、そもそもほとんどの人たちが自立の意味を勘違いしているということです。

それについては、次回の「大人はみんな「自立」の意味を勘違いしている。本当の自立とは?」で書きます。

初出『月刊サインズ・オブ・ザ・タイムズ(福音社)』

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