ほめるところから始めよう。ほめたらできる!

●子どものやる気を摘み取る言葉

ある県のローカル番組で象的な場面を見ました。それは親子料理教室というイベントの様子を紹介する番組で、たくさんの親子が集まって、それぞれシチューを作っていました。

はじめにアップで映ったお母さんが叱ってばかりのお母さんでした。
子どもがお玉でシチューの鍋をかき混ぜていると、いきなり「ほら、ほら、もっと集中して混ぜなきゃダメでしょ」と叱りました。

次に、「キョロキョロしないで真剣にやらなきゃダメだよ」と叱り、さらに「ほらほら~、こぼれてる。なんであんたはそうなの?こぼさずにできないの?」と叱りました。

次に、「なんであんたは上ばかり混ぜるの?下も混ぜなきゃ味がしみないでしょう」と叱りました。
お母さんはずっとこんな感じて否定的に叱り続けていました。

ですから、子どもはすっかりやる気をなくして、ブスッとした顔で嫌々シチューをかき混ぜています。
それを見て、またお母さんが叱りました。
「あんた、やる気がないの?いつもそう。すぐやる気がなくなる。やる気がないならやめちゃいなさい」。

それを見て、私は「お母さんのせいですよ」と一人でツッコミを入れました。
テレビを見ていた人はみんなそう思ったとはずです。
これでやる気が出たら不思議です。

でも、当のお母さんはそうは思っていないようで、「なんでこの子はこうなんだろう?」という感じでした。

●子どものやる気を高める言葉

次に、正反対のお母さんが映りました。
テレビというものは非常にたくさんの取材をして、その中からうまくつなぎ合わせて編集しているのですね。

2人目のお母さんは最初のお母さんと全く正反対で、子どもがシチューをかき混ぜていると、まず「上手だね」とほめました。
子どもは「うん!」と答えてやる気満々です。

次に、お母さんは「こぼさずにできるね」とほめました。
実はけっこうこぼれていたのですが、そう言いました。
すると、驚いたことに、鍋をかき混ぜる子どもの手がゆっくりになりました。
それまでは、けっこう速かった手の動きが急にゆっくりになったのです。
お母さんのほめ言葉は効果てきめんでした。

次にお母さんは、「下も混ぜると味がよくしみるんだって」と言いました。
たぶんイベント会場で放送が入ってのでしょう。
子どもはこういうとき上の方しか混ぜないことがあるからです。

それを聞いて、さっきのお母さんは、「なんであんたは上ばかり混ぜるの?下も混ぜなきゃ味がしみないでしょ」と言い、こちらのお母さんは「下も混ぜると味がよくしみるんだって」と言いました。

●プラスイメージの言葉なら前向きになれる

こちらのお母さんの言葉に、子どもを伸ばすヒントが2つあります。
その1つは、「下も混ぜると味がよくしみるよ」などのプラスイメージの言い方です。

「こういうことをすると、こういうプラスがあるよ。こういうよい結果があるよ」というように、プラス思考で前向きなイメージを伝える言い方です。

例えば、「今やっておくとあとでたっぷり遊べるね」「今夜のうちに準備しておくと、明日の朝が楽だよ」「見直しすると5点増えるよ」「ボールをよ~く見るとヒットが打てるよ」などです。

こういう言い方なら、言われた方も前向きになれるので、やってみようという気持ちになれるのです。

日ごろから「○○しなきゃダメだよ」などの否定的な言い方が口癖になっている人がたくさんいますが、それを「○○するといいよ」などの肯定的な言い方に変えるだけで、かなり違ってきます。

それに、肯定的な言い方に心がけていると自分自身もプラス思考で物事を見られるようになるという利点もあります。

●「できたらほめる」から「ほめたらできる」へ

2つめは、取りあえずほめる言い方です。
先ほどのお母さんは、こぼれていても「こぼさずにできるね」とほめました。
そして、そう言った瞬間に子どもの手の動きがゆっくりになりました。

親たちはみんな「できるようになったらほめよう」と思っています。
だから、ほめられないのです。
これだと、永久にほめられません。

ですから、できてなくても取りあえずほめることが大事です。
「ほめたらできる」のです。
「できたらほめる」ではありません。
順番を入れ替えてください。

例えば、「兄弟の仲が悪い。もっと仲よくさせたい」と思ったとします。
そのとき、ほとんどの親は、「またけんかしてる!なんでそんなに仲が悪いの?もっと仲よくしなきゃダメでしょ」と叱るところから始めてしまいます。

あるいは、お兄ちゃんに対して、「あなたお兄ちゃんのくせに、なんでそんなに意地悪なの?」などと叱るところから始めてしまいます。

でも、叱られた子どもたちは「ぼくたちはどうやら仲の悪い兄弟みたいだな」と思い込むようになり、お兄ちゃんは「ぼくはどうせ意地悪なお兄ちゃんですよ」と思い込むようになります。
そして、こういうイメージができてしまうと実際にそうなってしまう可能性が高まります。

●しつけたいことはほめるところから始める

ですから、この反対に、ほめるところから始めるようにして欲しいと思いま。
まず、「よし、ほめて兄弟仲をよくしよう」と決意して、ほめられる場面を探してください。

すると、数日後に、お兄ちゃんが弟に玩具の使い方を教えている姿を見られるかも知れません。
あるいは、弟が脱いだ靴下をお兄ちゃんが洗濯機に入れてくれる姿を見られるかも知れません。

そこで、「兄弟の仲がよくてうれしいわ」「お兄ちゃん、ありがとう。優しいね。助かるよ」「よく気がつくね。こういうお兄ちゃんがいるから弟も幸せだ」とほめます。

すると、先ほどとは反対に、子どもたちは「ぼくたちはどうやら仲のよい兄弟みたいだな」と思えるようになり、お兄ちゃんも「ぼくはどうやら優しいお兄ちゃんみたいだ」と思えるようになります。
このように兄弟仲についていいイメージができると、実際にそうなっていく可能性が高まります。

ほとんどの親たちは、ほめられる場面でほめることができません。
できることについては、「できて当たり前」と思ってしまうからです。
その結果、いつも叱るところから始めることになるのです。

兄弟仲だけでなく、これは何事においても言えることです。
「しつけたいことはほめるところから始める」と決意して、意識してほめられる場面を探すようにしてください。

初出『月刊サインズ・オブ・ザ・タイムズ(福音社)』

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