「共感」こそが全ての人間関係のマスターキー

●すぐにアドバイスしてしまうと…

これは中学の養護教諭に聞いた話です。
友だち関係で悩んでいたある女子生徒が担任の先生に相談したそうです。
すると、女子生徒が少し話したところで、担任の先生は「それなら、○○すればいいよ」とアドバイスしました。

それで女子生徒は、「先生、そうじゃなくて、カクカクシカジカ……」と付け加えの説明をし始めたそうです。
すると、言いたいことの半分も言わないうちに、またその先生は「じゃあ、こうすればいいよ」と言って解決策を話し始めました。

それで女子生徒は「この先生に何を言ってもムダだ。ぜんぜん聞いてくれない」と感じたそうです。
それで、その愚痴を養護教諭に話したのです。
女子生徒は友だち関係のストレスとその担任に対する不満で爆発寸前だったそうです。

それで、養護教諭は「そうなんだ…。そういう人間関係は苦しいね。あなたも大変だね」などと共感しながら話を聞いてあげました。
すると、女子生徒はだんだん笑顔になり、1時間ほど話してから「お腹が空いた」と言い残して元気よく帰っていったそうです。

●すぐに励ましてしまうと…

次は、私が電車に乗っていたときに見た光景です。
私のすぐ隣の席で大学生とおぼしきカップルがずっとおしゃべりをしていました。
楽しい話でひとしきり盛り上がった後で、女性がゼミか何かの人間関係について愚痴を言い始めました。

すると、それを聞いていた男性が「そんなの大したことじゃないよ。気にするなよ」と言いました。
女性は「うん…」と答えましたが、また愚痴の続きを話し始めました。

女性が少し話したところで、また男性が「気にしない。気にしない」と言いました。
そして、また女性が愚痴の続きを話し、また男性が「大したことじゃないよ。気にしない」と言いました。

すると、突然、女性が怒り出しました。「なんで聞いてくれないの?ちゃんと聞いてよ!」。
驚いた男性が「え、聞いてるよ」と答えると、女性は「あなたには大したことじゃなくても、私には大問題なの。もういい」と言いました。

男性は「えっ?何を怒ってるの?」という感じでびっくりしていました。
男性としては、女性の気持ちを楽にしてあげたくて励ましたのだと思います。
でも、女性への共感がないままいきなり励ましてしまったのがまずかったのです。

●つらさがわかってくれる人は信頼される

次は、デイサービスの職員さんに聞いた話です。
例えば、デイサービスに来たお年寄りが身体の不調を訴えたとします。
「今日は背中と腰が痛い。こういう天気の悪い日は必ず背中と腰が痛くなる。ああ、せつない……」。

こういうとき、職員の中には「大丈夫ですよ。がんばってください。ファイト、ファイト」とすぐに励ましてしまう人もいるそうです。
そう言われたお年寄りは、「この人、私がどんなにせつないかちっともわかってくれない。この人に言ってもムダだ」と感じます。
そういう職員は信頼されなくなるそうです。

職員の中には、「せつないですね。背中と腰ではつらいですね」「痛いのは嫌ですねえ」とお年よりの気持ちに寄り添って、共感しながら聞ける人もいるそうです。
こう言ってもらえると、お年よりは、「この人、私がどんなにつらいかわかってくれた。私の苦しさをわかってくれた。この人、なんていい人なんだ」と感じて信頼するようになります。

●励ましやアドバイスは共感の後

ここまで3つの例を出しました。
いずれも聞き手に共感力があるかないかで、結果がかなり違ってきます。
1例めの担任の先生、2例めの若い男性、3例めの信頼されない職員、いずれも共感力が足りないのです。

もちろん、みんな相手を思う気持ちはあります。
だからこそ、励ましたりアドバイスしたりするのです。
でも、共感がないところで励ましたりアドバイスしたりすると、相手は「この人は私の大変さをちっともわかってくれない」と感じてしまうのです。

ですから、まずは共感が最優先です。
もちろん励ましやアドバイスが必要な場合もありますが、たっぷり共感してからにしないと相手の心に届けることはできません。

例えば、2例目の場合なら、まずは「そうなんだ…。それは大変だね。嫌になっちゃうね」と共感しながら聞きます。
たっぷり共感した後で、「でも、大丈夫だよ。気にしなくていいよ」と言ってあげれば女性の心に届くかも知れません。

また、3例めのデイサービスの職員の場合なら、たっぷり共感した後で「でも、大丈夫ですよ。きっとよくなりますよ」と励まして、明るい未来をイメージさせてあげればお年よりも喜ぶかも知れません。

「かも知れません」と書いたのは、相手がまだそれを受け入れる状態でないなら、励ましやアドバイスはやめて共感に徹した方がいいからです。
この辺の匙加減はマニュアル化できない部分であり、相手をよく見て対応する必要があります。

●怒鳴り込んできた人もにこにこ顔で帰る

最後に、私が以前一緒の学校で勤務したことのある女性の教頭先生、T先生のお話です。
このT先生は仕事もよくできますが、共感力も抜群で、とにかく人間としての器が大きい方でした。
ですから、当然、子どもたちにも、職員たちにも、PTAの人たちにも尊敬されていました。

あるとき、一人の保護者の男性がものすごい剣幕で学校に怒鳴り込んできたことがありました。
「校長を出せ!」という感じです。
そのとき校長先生が不在だったので、T先生が対応しました。

衝立で区切った職員室の一角で、T先生はその保護者の話をじっくり聞きました。
頷きながら、共感しながら、2時間くらい聞いていました。

すると、だんだん男性の声の調子が変わってくるのがわかりました。
そして、2時間後にはニコニコしながら帰っていきました。
これにはみんな驚きました。

私たち職員はみんなどうなることかとひやひやしていたので、本当によかったと思いました。
すると、一人の職員が「T先生マジック」だと言いました。
私もまさにそうだと思いました。

●「共感」を意識の最前列に

まとめです。私たちは、親子関係、夫婦関係、家族関係、学校や職場の人間関係など、いろいろな人間関係の中で生きています。
ですから、誰にとっても人間関係をよくしたいというのは切なる願いのはずです。
そのために私がお勧めしたいのが「共感」です。

これを常に意識の最前列において、とにかくまずは相手にたっぷり共感してください。
言いたいことは最後の最後に言うようにしましょう。
できたら共感のまま終わって、言わない方がいいくらいです。
どうしても言いたいときは最後の最後にしましょう。

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