子どもの偏食・食べ物の好き嫌いをどうする?

●無理矢理食べさせられてトラウマに

これはある雑誌の編集者に聞いた話です。
彼は子どもの頃ピーマンが大嫌いでした。
あるとき、料理の中にピーマンがたくさん入っていて、それを選り分けて全部残しました。

すると、お母さんが大いに怒って、「全部食べないと明日デパートに連れて行かないよ」と言いました。
日曜日にデパートに行って、その屋上にあるメリーゴーランドやゴーカートに乗るのが当時の彼の最大の楽しみでした。

それで、彼はがんばってピーマンを食べました。
途中で吐きそうになりましたが、お茶で無理矢理飲み込みました。
食べ終わった後は入念に歯をみがいて、口の中のピーマンの痕跡を消し去りました。

その結果デパートには行けましたが、その後が悲惨でした。
というのも、それからけっこう頻繁にピーマンが出るようになったからです。
たぶん、お母さんが「今のうちに好き嫌いをなくそう」と決意したのでしょう。

彼はお母さんが怖いのでがまんして食べたそうです。
大人になった今、彼は一人で住んでいます。
ピーマンは絶対に食べません。
というより、食べられないそうです。

彼は、子どもの頃ピーマン以外にもブロッコリーやゴーヤも大嫌いでしたが、今はそれらは普通に食べられます。
でも、ピーマンは食べられません。
彼は「強制的に食べさせられたトラウマだ」と言っています。

そして、お母さんとは冷え切った関係になっています。
お母さんのことは「嫌い」というより「怖い」そうで、できるだけ会わないようにしているそうです。

●親子関係も崩壊

私は今まで似たような話を何人かから聞きました。
お母さんから苦手なグリンピースを強制的に食べさせられた女性もいました。
その女性はグリンピースは食べられるようになりました。

でも、この雑誌の編集者と同じように、お母さんのことが怖くて会わないようにしていると言っていました。
つまり、親子関係が崩壊して冷え切った関係になっているのです。

学校の給食で先生にバナナを強制的に食べさせられた男性もいました。
彼は未だにバナナの匂いすら気持ち悪く感じるそうです。

世の中にはこれに似た話がどれだけあるかわかりません。
そして、今も日々同じようなことが行われているのです。
先日も、あるママさんが「息子に青魚を無理矢理食べさせたら食べるようになった」などとうれしそうに話しているのを聞きました。

もちろん、食べ物の好き嫌いは少ない方がいいです。
ですから、親としてできることはしてあげて欲しいと思います。
でも、それ以上のことはしてはいけません。

●親にできることはしてあげよう

親にできることといえば、まずは料理の工夫です。
つまり、嫌いな物でもおいしく食べられるように工夫することが大切です。
料理の仕方を工夫することで食べられるようになることはよくあることです。

嫌いな食材を自分で栽培してみるのも効果的です。
ある子はオクラが食べられませんでした。それで、家庭菜園で親子でオクラを育てました。
そして、本人が収穫したオクラをお母さんが料理してあげたら、ちゃんと食べたそうです。

啓発も効果的です。
つまり、その食べ物にはどのような栄養があるのか、健康のためにどのように役立つのか、食べずにいるとどうなるのか、などについて子どもに教えてあげるのです。

親が話してあげてもいいですし、絵本を使うのもいいと思います。
今はそのような絵本がたくさん出ていますので、ネットや図書館で探してみてください。

子どもが「なるほど、そうなんだ。やっぱり食べた方がいいな。食べられるようになりたいな」と思えるようにしてあげることが大切です。

●強制的に食べさせるのはやめるべき

こういったことは、ぜひやってあげてください。
でも、それ以上のこと、やってはいけないことはやってはいけません。
つまり、強制的に食べさせるということです。

そういうことをすると、トラウマが残る可能性があります。
冒頭の編集者も、強制的にピーマンを食べさせられた結果、大人になった今もピーマンが食べられないのです。

注目して欲しいのは、強制されなかったブロッコリーやゴーヤは普通に食べられるようになっているということです。

大人になる過程で、あるいは大人になってから、人間の味覚はけっこう変わるのです。
それで、子どもの頃に食べられなかった物も自然に食べられるようになることも多いのです。
でも、トラウマになっていたら難しいわけです。

●子どもの好き嫌いは自分を守るための安全装置

子どもに苦手な食べ物が多いのには合理的な理由や必要性があり、大人になってその必要性がなくなれば自然に食べられるようになることが多いのです。

どういうことか説明します。
人間には甘味、塩味、旨味、酸味、苦味という基本的な5つの味覚があります。
そして、甘味はエネルギー源の炭水化物を感じ取り、塩味はミネラルを、旨味はタンパク質を感じ取ります。

子どもはこれら3つの味覚が好きで、残りの酸味と苦味が苦手です。
というのも、酸味は酸を感じ取るのですが、酸は食べ物が腐っている証拠でもあるからです。
そして、苦味があるときは毒が発生している可能性があるからです。

子どもは大人ほど経験がないので、食べ物を見たときに腐っているかとか毒があるかなどが判断できません。
それで、防衛反応として、酸味や苦味をおいしく感じないようになっているのです。

●安全装置が解除されれば食べられるようになる

また、見た目の問題もあります。
例えば、子どもはナスが嫌いなことが多いのですが、その理由を東京科学大学の上田玲子教授が解明しました。

ナスの料理はたいていの場合見た目がぐちゃっとしています。
子どもはそれを見て、無意識的かつ本能的に「腐っている。食べてはいけない」と感じ取ってブレーキがかかるそうです。

もちろん、こういったことには個人差もありますので、ほとんど当てはまらない子もいます。
でも、一般的に子どもにはこういう傾向があるということは理解しておく必要があると思います。

こういうわけで、子どもに好き嫌いが多いのは、味覚的にも視覚的にも子どもが自分を守るための安全装置が働いているからなのです。
ですから、大人になって判断できるようになり、安全装置が解除されればれば自然に食べられるようになることが多いのです。

ですから、親にできる工夫をしながら、長い目で見てあげてください。
そして、毎回の食事時間が楽しく幸せなものであることを最優先にしてあげてください。

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