苦手なことは後回しのほうがうまくいく

●苦手なことを今直す必要はない

前回は、「子どものうちなら苦手なことも直るというのは嘘で、実は子どもは苦手なことを直すのが苦手」ということを書きました。

これは今までの常識をひっくり返すことであり、とても大事なことなのでぜひ頭に入れていただきたいところです。

そして、同時にもう一つ大切なことがあります。
それは、なにも今直さなくてもいいということです。

なぜ、今直さなくてはいけないのでしょうか?
なぜ、子どものうちから完璧な人間にならなければならないのでしょうか?

別に今でなくてもいいのです。
苦手なことは後回しで大丈夫です。
なぜなら、子どもの人生は長いからです。

だんだん成長していけば、大人になるに従って、この先いくらでも本人のやる気スイッチが入る機会がやってきます。

●やる気スイッチが入る機会は山ほどある

例えば、何か失敗して「このままでは将来もっと困る。今のうちに…」と考えてスイッチが入ることもあります。

または、将来の夢が見つかって、それでスイッチが入ることもあります。
なぜなら、自分がやりたいことを実現させるためには、苦手なことを放っておくと足を引っ張るからです。

その夢を実現させるためには、やはり自己改造も必要になるのです。
つまり、夢に向かうスイッチが入ると、それに連動して自己改造のスイッチも入るのです。

誰かの伝記を読んで、「ナイチンゲールってすごいなあ。私も人の役に立ちたい!がんばるぞ」となるかも知れません。

困っている人を見て、使命感に燃えてやる気スイッチが入ることもあります。
例えば、ある高校生は、震災の被害地でボランティア活動をして、それがきっかけで世の中の役に立てる人間になりたいと強く思うようになりました。

それまでは、勉強も生活態度もいい加減だったそうですが、猛烈に勉強をするようになったそうです。

あるいは、好きな子ができて、「いいところを見せたい。自分を向上させたい」と思ったり、あるいは「結婚したい。そのためにはもっとしっかりした自分になりたい」と考え、それがきっかけになるかも知れません。

あるいは、ライバルが現れて、「あの人すごいなあ。ようし、自分もがんばろう」となるかも知れません。

●スイッチを押せる人と押せない人がいる

このように、やる気スイッチが入りそうな機会というものは、誰にも山ほどやってきます。
でも、実は、ここでまた人生の分かれ目があります。

何かの機会があって「あ~、やってみたい。がんばってみたい」と思ったとき、「よし、やるぞ。自分ならできるはずだ」と思える人は実際にスイッチが入ります。
つまり、自己肯定感がある人ならスイッチが入るのです。

でも、このとき、「やってみたい…。でも、だめだろうな。どうせ、ぼくなんかできないよ」となってしまって、今ひとつ、スイッチが入らない人もいるのです。
つまり、自己肯定感がない人です。

●自己肯定感があるかないかで決まる

自己肯定感がある人は、いろいろなスイッチを押すことができます。
例えば、仕事において、「これをやってみたい。できるはずだ。よし、やるぞ」「あ、これもいいな。よし、自分ならできる。やってみよう」となります。

また、プライベートでも、「これおもしろそうだ。できる、できる。やってみよう」「お~、これも楽しそう。よしやってみよう」となります。

実際にやり始めて、ちょっとした壁があったときも、「う~ん、うまくいかないな…。でも、自分ならできるはずだ。がんばるぞ」となって、がんばり続けることができます。

ところが、自己肯定感がない人は、仕事でもプライベートでもなかなかスイッチを押せません。

たとえやり始めたとしても、ちょっと壁があると「う~ん、うまくいかないな…。やっぱりダメだ。ダメだと思ったけどやっぱりダメだ」となって、がんばりが続かなくなります。

●自己肯定感を育てながら待つ

ですから、親は、子どもの自己肯定感を育てながら待つことが一番に大事です。
自己肯定感があるかどうかで、人生は決まるのです。
自己肯定感さえ育ててあげれば、自分の人生をどんどん切り開いていけるようになります。

そして、やりたいことが見つかってスイッチが入れば、それを実現するために苦手なこともやらなければならなくなります。
その時、初めて、自己改造という困難なことも可能になるのです。

「子どものうちに苦手なことを直そう」と考えて叱り続けても、結局は直りませんし、一番大切な自己肯定感がぼろぼろになってしまいます。
それでは、後で伸びる芽を摘んでしまうことになります。

このようなわけで、「子どものうちなら苦手なことも直るというのは嘘で、実は子どもは苦手なことを直すのが苦手」ということと、「なにも今直さなくてもいい」ということの2つが同時に大切なのです。

初出『月刊サインズ・オブ・ザ・タイムズ(福音社)2014年2月号』

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