生きていてくれるだけで……

以前教えたある男の子のお母さんから年賀状をいただきました。
そこには「妹の○○が大学受験です」とありました。
「妹の○○」というのは私が教えたK君の妹のことです。

妹のことが書いてあってK君のことが書いてないのは、K君が既に亡くなっているからです。
K君が生きていれば22才で、就活の真っ最中だったかも知れません。

私はK君が小学一年生の時に受け持ちました。
元気いっぱいで、本当に子どもらしくてかわいい子でした。
そして、とても感性が豊かな子でした。
K君の書く日記には、自分が発見したことや感じたことが素直でオリジナルな表現で書かれていて、読むのが楽しかったです。

次の年に、私はもう一度一年生を受け持つことになり、二年生に持ち上がりませんでした。二年生になってしばらくした頃、K君は小児白血病にかかり、大きな病院に入院しました。
お父さんお母さんは溢れんばかりの愛情で慈しみましたが、無情にも病は進行しほどなく亡くなりました。

このときのご両親の心中を思うと今でも胸が痛みます。
同級生の子どもたちも、みんなK君の死を心から悼みました。
K君には本当に大きな未来があったはずなのに、それを思うと何とも言えない気持ちになります。

やる気満々で入学してきて、真新しいランドセルを背負って元気に通っていたのに……。
友達と遊んだりケンカしたり、字を覚えたり計算を覚えたり、大きな声で本を読んだりしていたのに……。
それもわずか一年半の間でした。

今、私は思います。
世の中のお父さんお母さんは、子どもが「勉強しない」「やるべきことができない」「片づけができない」「落ち着きがない」「話を聞かない」と嘆いています。
でも、本当は、生きていてくれるだけでありがたいのではないでしょうか。
それは決して当たり前のことではなく、有り難いことなのではないでしょうか。

失って初めてわかるということのないように、今そのことを胸に刻んで欲しいと思います。
今ともにあるこの時を大切にしてください。
溢れんばかりの愛情で慈しんであげてください。

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