身近な人にこそ思いやりを

職場で誰かがコーヒーカップを落として割ったとします。たぶん、あなたは「だいじょうぶ? けがはない?」などと言いながら片づけを手伝うと思います。

さらには、「服は汚れなかった?」と心配したり、かわりのコーヒーを入れてあげたりするかも知れません。間違っても、「何やってるの! 気をつけなきゃダメでしょ」などと責めたりはしないはずです。

ところが、自分の子どもが同じことをした場合は、まったく違う言動になります。例えば、ほとんどの人の最初のひと言は、「だいじょうぶ?」ではなく「何やってるの!」になると思います。

さらには、「なんでそんなにそそっかしいの? 気をつけなきゃダメでしょ」とか「落ち着きがないからだよ!」などと言ってしまうかも知れません。

また、例えば職場の同僚が仕事が大変だと愚痴をこぼしたとしたら、あなたは「本当に大変だよね。イヤになっちゃうよね」と共感するはずです。間違っても、「仕事なんだからしょうがないでしょ」などと正論で責めたりしないはずです。

ところが、子どもが宿題の愚痴をこぼした場合は、「何言ってるの。ちゃんとやらなきゃダメでしょ」となります。なぜかというと、「子どものため。しつけや教育のため」という思い込みと「親だから許される」という勘違いがあるからです。

そして、この思い込みと勘違いこそが、親子の人間関係を崩壊させる最大の原因です。親子関係が崩壊すると、しつけや教育どころではありません。子どもの人格形成にも影響しますし、親子で長い間苦しむことにもなります。でも、親にはそれが見えていません。

他人同士の場合は、よい人間関係をつくらないと自分が苦しくなることが目に見えています。ですから、相手の気持ちを汲んだ思いやりのある言動ができるのです。

本当は、職場の人間関係よりも、親子の人間関係の方が大切なはずです。親子だけでなく、夫婦関係や兄弟関係もそうです。

私たちは、本当に大事にするべき人間関係を粗末にしています。一番身近で大切な人に対してこそ、相手の気持ちを汲んだ思いやりのある言動をしていきたいものです。

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